【参加レポート】「練馬区の図書館専門員ってなーに?」

図書館イベント参加レポート

20181214日付で、練馬区立図書館専門員労働組合が練馬区に対しストライキの通告を行いました。

この記事では、練馬区立図書館の図書館専門員の方々のストライキ表明に先立つ形で20181120()に開催された、「練馬区の図書館専門員ってなーに?」と題された交流会のレポートを行いたいと思います。

その当時はあくまでも、「区立図書館2館の指定管理者制度を導入しての運営に反対するための集会」といったニュアンスだったと記憶しています。

図書館司書のストライキ!?

ストライキ労働条件に維持・向上その他の目的を実現するために、労働者が集団的に業務を停止すること。ストライキ権は、団結権・団体交渉権と共に労働者の基本的権利に属するが、公務員・国営企業職員・地方公営企業職員は法律によって禁止される。(『広辞苑 第五版』・1998・岩波書店)

ストライキという言葉が、図書館の現場で働く人たちから掲げられたことに衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。練馬区が直営で運営する公立図書館2館について民間に運営を任せるという動きがあり、そのことに反対する当該図書館等で働く非常勤職員「図書館専門員」の方々が立ち上がりました。様々なニュースに取り上げられ、またSNSでも大きな話題となりました。

Twitterでの情報によれば2019年年1月21日の団体交渉で、 石神井、練馬図書館への指定管理者導入の提案は妥結となったとのことです。

(ソース元はこちら→https://twitter.com/nerisen_lib/status/1090903310582788096)

 

どのような集会だったのか?

この「練馬区の図書館専門員ってなーに?」は、図書館専門員の方達が市民の人に自分たちの仕事について知ってもらうための集会と位置付けられているようでした。会全体としては、第一部が図書館専門員の仕事内容などの紹介、第二部が図書館専門員の置かれている現状についての報告という二部構成になっていました。集会の最初に、「指定管理者の是非を問うための集まりではない」という断りがあったことを付記しておきます。

まず第一部ではパワーポイントのスライドを使って、図書館専門員の仕事内容の紹介がありました。日々の業務について、具体例を交えたレファレンスについての説明、地域資料を生み出すということ、児童サービスについてなどの説明がクイズ形式も交えつつ紹介されていきます。

そして、その後に質疑応答があり、

(1)本を除籍する際の基準や選択について

(2)選書について

(3)除籍した本とリサイクル資料の行き先について

(4)除籍と本を置くスペースの問題について

(5)マンガの取り扱いについて

以上の5つの質問があり、いずれの質問にも図書館専門員の方々が回答されていました。とても丁寧に説明をされている姿が印象的でした。

そして第二部は、「練馬区立図書館専門員の現状」というテーマでお話です。ここで手元のメモを見返すと、「練馬図書館のカウンターを取り返した」、「根幹的業務が大事、それを維持するのは直営でないと出来ない」とあります。メモにあった通り、カウンター業務に比重を置かれていること、公共図書館を運営するに当たっては直営の方が望ましいというようなお話がされていたように記憶しています。

また図書館専門員の方々が受ける研修についてもお話があり、国立国会図書館、東京都立図書館、図書館総合展、図書館大会や、さらに自己研修として様々な場所に行かれているとのこと。その流れで、「森羅万象について根拠を示せる」ことが図書館の強みだということ説明がなされました。

練馬区と図書館員との団体交渉

そして、次に練馬区との団体交渉についての話になります。この集まりの核心と言える部分かもしれません。冒頭に書いたように、練馬区が直営で運営する公立図書館2館を、民間に運営を任せるという動きについて、どのような現状になっているかというお話でした。

その中でも、「練馬区立図書館のカウンターに立ちたい」ということをお話されていたことが印象に残っています。そのために、「今を失うと行き場がない」と切実な口調で仰っていました。練馬区からは、練馬区立図書館から区内の学校図書館へ配置換えの提案があったとのことです。しかし、それは練馬区立図書館専門員労働組合として受け入れられる提案ではないとのことでした。

以上を結びとして第二部は終了し、全体の質疑応答へと入ります。

質疑応答

まず「労使協定は1月までなのか?」という質疑が挙がりました。その質疑については会場内にいた練馬区議会議員の方にマイクが向けられ、 「この件に関して要望と陳情は行っている、12月中に議会を開きたい」というお話がありました。また「民間の方がサービスに寄与する根拠を示してほしいという資料請求」を行ったということも話されました。

指定管理の図書館になると、経験者は語る

その後に、過去に指定管理者制度のもとで運営されている図書館で勤務経験のある図書館専門員のお話がありました。内容としては、指定管理者制度のもとで公共図書館が運営されることの弊害、それを実体験に基づいて語るという内容でしょうか。

具体的には、「10年間勤めていたが、2度目の更新時に選定されなかった」、「引継ぎのノウハウが共有されない」、「おはなし会が出来ない」、「イベントを開催しろという会社の方針があった」、「委託で職員を採用する際に司書資格が無くでも採用してしまう」、「更新毎に雇用とノウハウがリセットされてしまう」という内容のエピソードが語られました。

そして全体の最後として、組合の委員長を会場全体で激励するという流れで「練馬区の図書館専門員ってなーに?」は締め括られました。

手元に控えたメモ書きをもとにして書いていくことになるので、実際に話されたことと少し食い違いなどがあるかもしれません。もし何かございましたら、ご意見、ご指摘などいただければ幸いです。

以上が、「練馬区の図書館専門員ってなーに?」への参加記録になります。私自身、過去に図書館で働いていた身として様々な感想を抱きました。

「練馬区の図書館専門員ってなーに?」に参加して感じたこと・考えたこと

待遇向上のために司書達が立ち上がったのは素晴らしいことだけど

私個人としては、待遇向上のために図書館司書の方々が立ち上がったということは非常に意義があることだと思いました。ただその反面で、志向されている図書館サービスの方向性、またそれに関わる指定管理者制度導入に関する考えには、少しの違和感と疑問を持ったことも事実です。

練馬区立図書館の図書館専門員の方々が志向されているサービスについて

端的に言ってしまえば、『市民の図書館』(日本図書館協会発行・1970年5月初版)の延長線上の図書館サービスを志向されているように感じました。

具体的に言えば図書館のカウンターに立つことが前面に押し出されていたことです。

集会の中で図書館専門員の方から、「カウンターに立ちたい」という発言がありました。『市民の図書館』の「図書選択」の項目(71p)には以下のような記載があります。(図書選択は)「選択の実際は直接利用者と接している職員が主になって行わなければ利用者の要求が反映しにくい。特に読書案内係、貸出係は必ず選択に加わるようにする」とあるように、直接利用者と接するカウンター業務が選書に影響を及ぼす旨の記述があります。カウンターに立つこと、また利用者と直に接することを重視している。その点が『市民の図書館』に描かれているようなサービスを志向されているよう感じた理由です。

また児童サービスにもついてもお話がありました。こちらも、『市民の図書館』の中で重点的に説かれているサービスの考え方と、繋がるものがあると感じました。

指定管理者制度について、悪いのは制度そのものなのか

こちらはナイーブな話になると思うのですが、指定管理者制度に関しての感想です。集会では指定管理者制度のもとで公共図書館が運営されることへの弊害が話されていました。しかし、個人的には制度自体の問題として括ってしまうことは乱暴なのではないかと感じています。

例を挙げると、「引継ぎのノウハウが共有されない」、「おはなし会が出来ない」、「イベントを開催しろという会社の方針があった」、「更新毎に雇用とノウハウがリセットされてしまう」といった点は、指定管理者制度自体の問題ではなく、個別なやり取りの面で解消するべきことではないでしょうか。

また集会全体の端々から、置かれている原因が全て指定管理者制へと向けられている印象も持ちました。

ここまで集会で話されていたことについて、やや辛辣な感想を述べてしまったかもしれません。

まとめ

しかし、ストライキという手段を掲げ図書館司書の方々が自らの待遇改善のためにアクションを起こしたということは凄いことだと思いました。寡聞にしてこのようなケースを聞いたことはありません。待遇向上のために、このような動きが広がっていけばよいと思います。

また私自身も過去に図書館で働いていた身として、より待遇の良いところに移ることばかりを考えていたことを反省しました。「隗より始めよ」と中国の故事成語にあるように、図書館業界全体の待遇を向上させていくために、自分自身の待遇を今いるところで改善していくことも考え、動いていくべきだったとも考えさせられました。練馬区の図書館専門員の方々に、大きな賛辞を贈りたいと思います。図書館業界の雇用環境を取り巻く現況に対し、一つの突破口になるように祈っています。

この記事で参考にさせていただいた書籍の紹介を以下に記しておきます。

・『市民の図書館』(日本図書館協会発行・1970年5月初版)

・『公共図書館の冒険 未来につながるヒストリー』(柳与志夫・田村俊作編・みすず書房・2018年4月16日発行)

図書館員がカウンターに立つことについての示唆を受けています。

その後のストライキについての動き

練馬区の図書館員によるストライキの動き、練馬区立の図書館練馬図書館と石神井図書館で働く図書館専門員の方々を、区直営の光が丘図書館の業務に従事してもらうという形で妥結したようです。→Twitterによる情報はこちら

公式な情報は見当たりませんが、練馬区での動きは一段落した模様です。

コメント

  1. […] 先々月の2月5日に「練馬区の図書館専門員ってなーに?」についての参加レポートを書きました(こちら) […]

  2. […] この記事では、練馬区立図書館の図書館専門員の方々のストライキ表明に先立つ2018年11月20日(火)に開催された、「練馬区の図書館専門員ってなーに?」と題された交流会に参加しての感想を書きたいと思います。 「練馬区の図書館専門員ってなーに?」についての参加レポートは→(こちら) […]

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